故人にしてあげたい・・・「湯灌」について

湯灌③

亡くなった故人を見た家族からよく「こんなに瘦せてしまって」や「長い闘病で顔が変わってしまって」などという声をよく聞きます。そんな声にこたえてくれるのが死化粧と言われるメイクです。映画「おくりびと」のヒットもあり納棺師という職業も知られるようになりましたが元々は「湯灌」という葬儀に付随する所作が始まりとなっています。ここではこの「湯灌」とは何なのかその意味合いから実際に行われることなどを詳しくご説明いたします。

①「湯灌」とは何か、理由と意味、宗教的な意味合いを説明します

②衛生面から見た「湯灌」

③湯灌の流れとは

④湯灌の準備で必要な事

⑤湯灌

⑥身支度を整える

⑦湯灌の費用ってどれくらい?

⑧最後に

湯灌(ゆかん)は、日本における伝統的な死者の儀礼で、故人を清めるために行われる重要な儀式です。この儀式は、死後の旅立ちを迎えるための準備として、古くから行われてきました。ここでは、湯灌について以下の目次に従って詳しく説明します。

湯灌をする理由と意味、宗教的な意味合いとは

湯灌は、故人の体を清めるために温かいお湯で洗い清める儀式です。この儀式には、日本の伝統的な宗教観や文化が深く関わっています。湯灌を行う理由には、まず故人が死後も清潔であることを尊重し、故人の魂が次の世界へと安心して旅立つことを願う意味があります。また、死者が穢れを持たないようにするという意味も含まれています。

宗教的な観点から見ると、仏教や神道においては、死は穢れとされ、その穢れを浄化するための儀式が必要とされます。仏教では、湯灌は故人が次の生へと転生する準備として重要な儀式とされ、浄土へ旅立つために肉体を清める行為と考えられます。神道でも、死は穢れとされるため、湯灌はその穢れを払うための大切な儀式となります。

衛生面

湯灌には、衛生面での理由も含まれています。死後、人体は急速に腐敗が進むため、故人を清潔な状態で保つことが求められます。湯灌を行うことで、皮膚の汚れや老廃物、汗などが洗い流され、故人を清潔な状態に整えることができます。また、これにより、故人に触れる遺族や葬儀関係者にとっても、衛生的な環境が保たれます。

湯灌の流れ

湯灌の儀式は、通常以下のような手順で進行します。

  1. 祈り: 湯灌の前に、故人の魂が安らかに旅立つことを願うため、短い祈りを捧げます。
  2. 身体の清拭(せいしき): 最初に、ぬるま湯に浸した布やスポンジで故人の身体を優しく拭きます。この時、特に丁寧に手足や顔を清めます。
  3. 洗髪: 故人の髪をお湯で洗い清めます。必要に応じて、シャンプーやリンスを使用することもあります。
  4. 爪の手入れ: 爪を切り揃えたり、手足の爪を清めたりします。これにより、故人の身だしなみが整えられます。
  5. 洗顔と化粧: 顔を清めた後、故人に化粧を施します。この化粧は、生前の姿に近づけるために行われます。

湯灌の準備

湯灌を行うためには、いくつかの準備が必要です。まず、湯灌を行う場所の確保が重要です。通常は、故人が安置されている場所で行われますが、特別な湯灌専用の部屋が用意されている場合もあります。次に、使用する道具の準備です。これには、温かいお湯、清潔な布やタオル、シャンプー、爪切り、化粧品などが含まれます。また、湯灌を行う際には、遺族や専門のスタッフが必要となります。スタッフは、湯灌の儀式に慣れているプロフェッショナルであり、故人に対する敬意を持って丁寧に対応します。

湯灌

湯灌自体は、故人の体をお湯で洗い清める作業です。この作業は、通常専門のスタッフが行い、遺族が見守ることが一般的です。スタッフは故人の体を慎重に扱いながら、温かいお湯を使用して体全体を清めます。頭から足の先まで丁寧に洗い、故人が安らかに見えるように配慮します。この時、故人が生前の姿に近い状態になるよう、髪の毛や顔の清めも行います。

身支度

湯灌が終了した後、故人には適切な身支度が施されます。身支度には、故人が生前好んでいた衣服や、儀式用の白装束を着せることが含まれます。白装束は、死後の旅立ちの衣装として、日本の伝統において非常に重要な意味を持ちます。これにより、故人が穢れなく、清らかな姿で次の世界へと旅立てるように整えられます。また、必要に応じてメイクや髪型の整えも行われ、できる限り生前の姿を再現します。

湯灌の費用

湯灌の費用は、儀式を行う場所や内容、地域によって異なりますが、一般的には数万円から十数万円が相場とされています。費用には、湯灌を行うための道具や資材、専門スタッフの人件費が含まれます。費用の範囲は、シンプルな湯灌から、より豪華なオプションを加えたものまで様々です。また、葬儀プランに湯灌が含まれている場合もあり、その場合は全体の葬儀費用に組み込まれることが多いです。

最後に

湯灌は、日本の葬儀において非常に重要な儀式であり、故人に対する最後の敬意を表すものです。この儀式を通じて、遺族は故人との最後の別れを丁寧に行うことができます。また、宗教的・文化的な意味合いを持つ湯灌は、死後の穢れを清め、故人が安らかに旅立つための準備として深い意味を持っています。湯灌を通じて、遺族は故人に対する感謝と敬意を表し、故人が次の世界で安らかに過ごせるよう祈りを込めます。このようにして、湯灌は日本の死生観において重要な役割を果たしています。

この説明が、湯灌の重要性や手順、そしてそれに込められた深い意味を理解するための一助となれば幸いです。

長久山安詳寺 僧侶
福島県出身
30代まで飲食店を経営していたが仏教に関心を持ち、僧侶に。
タイやカンボジアなど海外の仏教徒を通じ国際貢献活動も積極的に行う。